ハンド施術とマシン施術、エステティシャンとして身につけるならどっち?

おしゃれ・美容

「ハンドの技術を磨けるサロンと、マシン中心のサロン、どちらに入ったほうがいいですか」。
エステティシャンを目指す方から、いちばんよく受ける質問のひとつです。

はじめまして、美容業界のキャリアアドバイザーをしている佐伯美穂です。
大手エステサロンで12年間エステティシャンとして働き、店長と新人研修の担当も経験しました。
2人の子どもを育てながら、いまは美容業界で働きたい方の職場選びの相談に乗りつつ、記事を書いています。

先に私の考えをお伝えします。
最初に身につけるならハンドで、マシンはその上に重ねていくのがおすすめです。

ただ、マシンを軽く見ているわけではありません。
この記事では、働く側から見たハンドとマシンの違いを、業界団体の資格制度や公的機関のデータをもとに整理します。
就職先を選ぶときに確かめておきたいことまでお伝えします。

ハンド施術とマシン施術は、仕事として何が違うのか

多くのサロンは「どちらか」ではなく「組み合わせ」

まず知っておいてほしいのは、現場ではハンドとマシンを分けて考えないことが多い点です。

厚生労働省がまとめたエステティック業の人材育成マニュアルでは、エステティックを「手技、化粧品、栄養補助食品および、機器、用具、等を用いて」肌や体を健やかに保つ行為と説明しています。
手技も機器も、もともとエステの仕事に含まれているわけです。

実際のサロンも同じです。
エステ技術スクールを運営するマッコイが2022年に受講サロンへ行ったアンケートでは、「手技と機器を組み合わせた施術」をしているサロンが71.1%、「手技のみ」が28.9%でした。
自社スクールの受講サロンを対象にした小規模な調査ですが、私が現場で見てきた感覚とも合っています。

つまり、本当の問いは「どちらを選ぶか」より、「どちらを先に、どこまで深く身につけるか」です。

働く側から見た違いを比べる

働く側の目線で、ハンドとマシンの違いを表にまとめました。

比べる点ハンド施術マシン施術
一人前になるまで手の動きや力加減を体で覚えるので時間がかかりやすい操作の手順を覚えれば早めに施術に入れる
仕上がりの差担当者の腕で差が出やすい誰が担当してもそろいやすい
体への負担手首や指、腰に負担がかかりやすい比較的軽い(立ち仕事なのは同じ)
必要な知識筋肉や骨格、体重のかけ方機器のしくみ、出力の調整、施術してはいけないケース
職場が変わったとき手ひとつでそのまま持っていける同じ機種がなければ覚え直しになることも

どちらにも良さと大変さがあります。
ここからは、それぞれをもう少し詳しく見ていきます。

ハンド技術を身につけるメリットと気をつけたいこと

職場が変わっても持ち運べる技術になる

ハンド技術のいちばんの強みは、どこへ行っても使えることです。
機械はサロンごとに機種が違いますが、手はひとつしかありません。

業界の資格も、ハンドを土台に組み立てられています。
日本エステティック協会の基礎資格であるAJESTHE認定エステティシャンでは、実技試験が「フェイシャル/ボディ:手技のみ」と定められています。

実技試験を実施している日本エステティック試験センターの案内を見ても、フェイシャル機器は「口頭試問のみ」です。
マッサージは基本手技3手技以上(ボディは4手技以上)を組み込んだものが求められます。
業界として、まず手で施術できることを基礎に置いているのがわかります。

お客様の状態に合わせられるのもハンドの強みです。
先ほどのマッコイの調査で手技のメリットを聞いた質問では、「お客様の体の状態に合わせて施術できること」が83.6%で最も多い答えでした。

むくみが強い日、肩がこっている日、生理前で肌が敏感な日。
同じお客様でも、触れると毎回少しずつ違います。
その違いに気づいて圧や手の運びを変えられるようになると、指名をいただける場面が一気に増えていきます。

手首や腰の負担は、体の使い方で変わる

ハンドの大変さは、なんといっても体への負担です。
私も新人のころ、最初の数か月は手首に湿布を貼って出勤していました。

日本整形外科学会は、親指の付け根が痛むドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)について、「手の使いすぎやスポーツや指を良く使う仕事の人にも多い」と説明しています。
妊娠出産期や更年期の女性に多いとも書かれていて、女性の多いエステの職場では他人事ではありません。

ただ、負担の大きさは体の使い方でかなり変わります。
指先や腕の力だけで押すと、手首はすぐに悲鳴を上げます。
足を開いて重心を落とし、体重を乗せて圧をかけるようにすると、少ない力で深く届くようになります。

私が研修を担当していたときも、手技の順番より先に、立ち方と体重移動を何度も練習してもらいました。
就職先を選ぶときは、研修でこうした体の使い方まで教えてもらえるかを聞いてみてください。
痛みが続く場合は我慢せず、整形外科を受診しましょう。

マシン施術を身につけるメリットと気をつけたいこと

結果を出しやすく、体への負担も軽い

マシンの強みは、手では届かない働きかけができることです。
マッコイの調査で機器のメリットを聞いた質問でも、「手技ではできない効果が期待できる」が78.4%、「効果が高い」が76.5%でした。

働く側にとってうれしいのは、「施術者の負担が少ない」が52.9%と半数を超えていた点です。
子育てしながら長く働きたい方にとって、体の負担が軽いのは大きな魅力です。

担当者による仕上がりの差が出にくいので、新人でも早くお客様を担当しやすくなります。
未経験の方が自信をつけるきっかけにもなります。

私が働いていたサロンでも、痩身コースはマシンで体を温めてから、ハンドで流す組み立てでした。
マシンが下ごしらえを担ってくれるので、手の負担はハンドだけのコースよりずっと軽く感じたものです。

機械を扱う人に求められる知識と責任

一方で、マシンは「ボタンを押せば誰でもできる」ものではありません。
出力の調整を間違えたり、使ってはいけない肌の状態を見落としたりすれば、お客様にけがをさせてしまうおそれがあります。

国民生活センターの2025年度 全国の危害・危険情報の状況によると、エステティックサービスに関する危害情報は380件ありました。
やけど(熱傷)の危害580件のうち、エステティックサービスは90件で、医療サービスの97件に次いで多くなっています。

教育の大切さを示す調査もあります。
消費者庁の消費者安全調査委員会がまとめたエステサロン等でのHIFU(ハイフ)による事故の報告書では、施術者の12.3%が、機器を使い始める前に研修も説明会も「いずれもなかった」と答えていました。
報告書は「施術者に対する機器や施術の教育が十分ではない」と結論づけています。

この報告を受けて、厚生労働省は2024年6月7日の通知で考え方を示しました。
HIFUで細胞に熱凝固を起こさせ得る行為は、機器が医療用かどうかにかかわらず、医師免許のない人が業として行えば医師法違反になります。
エステティシャンが扱ってよい施術と、医療の領域との線引きを知っておくことも、マシンを扱う人の大事な仕事です。

厚生労働省のマニュアルでも、新人に求める力として「トリートメントに用いる機器の使用方法や使用上の留意事項について、一通り理解している」ことが挙げられています。
マシンを任されるということは、安全を守る責任も一緒に任されるということです。

新人はどちらから身につけるのがいいか

ハンドを土台に、マシンを重ねる順番がおすすめ

ここまでを踏まえて、私は「ハンドを土台に、マシンを重ねる」順番をおすすめしています。
理由は次のとおりです。

  • 業界の基礎資格がハンドの実技で組み立てられている
  • 手で肌や筋肉の状態をつかむ力が、マシンの出力や当て方を判断するときの土台になる
  • 機種が変わっても、ハンド技術は職場を移っても使い続けられる

手で触れて「今日はここが硬い」とわかる人は、マシンを使うときにも当てる場所や強さを的確に選べます。
逆に、マシンだけで覚えると、機械が変わったときに一から覚え直しになりがちです。

もちろん、マシン中心のサロンから始めるのが悪いわけではありません。
体の負担が少ない職場で経験を積み、あとからハンドを学ぶ人もいます。
大切なのは、どちらの技術もいずれ身につけるつもりで職場を選ぶことです。

就職先を選ぶときに確認したいこと

説明会や面接では、次のような点を質問してみてください。

  • 新人研修のうち、ハンドの技術にどれくらいの日数をかけるか
  • 入社後も定期的に技術研修があるか
  • マシンを扱う前に、操作方法や施術してはいけないケースを教わる機会があるか
  • 手首や腰を痛めないための体の使い方まで教えてもらえるか
  • 資格取得を支援する制度や、取得後の手当があるか

聞き方に迷ったら、「マシンを使う施術は、入社後どのタイミングで、どんな研修を受けてから担当しますか」と尋ねてみてください。
時期と内容の両方を答えてもらえれば、育成の流れがかなり見えてきます。

求人票の「未経験歓迎」「研修充実」という言葉だけで判断せず、中身を具体的に聞くのがおすすめです。
答えがはっきり返ってくるサロンは、育成に力を入れていると考えてよいと思います。

ハンドを軸にマシンも組み合わせるサロンの例

ハンドを土台に育てる考え方を、採用の場ではっきり打ち出しているサロンもあります。
例として、全国に70店舗(2024年12月時点)を展開するたかの友梨ビューティクリニックを紹介します。

同社の採用サイトでは、「機器やコスメに左右されないハンド技術は一生ものの財産となります」と書かれています。
研修の日程も公開されていて、入社後の半年間で次のように段階的に学ぶ流れです。

時期期間主な内容
新人研修2週間エステティック概論、消毒法、マナー、アームやフットのトリートメント、痩身トリートメントなど
3ヵ月研修10日世界のボディエステ(アーユルヴェーダ、セブ式ヒロットなど)
6ヵ月研修5日世界のフェイシャルエステ、ボディリラクゼーショントリートメントなど

研修費や研修教材費は無料で、エステティックセラピスト協会の資格を取ると、毎月最大20,000円の技術給も出ます。

一方で、マシンを使わないサロンというわけではありません。
コーポレートサイトには「先端美容マシンを導入」とあり、フェイシャルコースの「造形美顔」では、ハンドの技術と低周波マシンを組み合わせています。
ハンドを軸に、マシンをその上に重ねる形です。

研修の流れやキャリアの選び方、子育てとの両立のしやすさなど、働く側から見た情報は、たかの友梨の社員の育成環境や働き方をまとめたページで詳しく紹介されています。
就職先を比べるときの参考にしてみてください。

まとめ

ハンドとマシンは、どちらが上というものではありません。
多くのサロンが両方を組み合わせて施術していて、エステティシャンには両方の技術と知識が求められます。

そのうえで、新人が最初に身につけるならハンドがおすすめです。
業界の基礎資格は手技で組み立てられていて、手で肌や体の状態をつかむ力は、マシンを扱うときにもそのまま生きます。

マシンは体の負担を減らし、結果を出しやすくしてくれる心強い道具です。
そのぶん、安全に扱う知識と責任がついてきます。
研修でどこまで教えてもらえるかを、就職前に確かめておきましょう。

手に技術があると、ライフステージが変わっても働き方を選びやすくなります。
私自身、出産のたびに職場へ戻れたのは、手が技術を覚えていたからでした。
これからエステの世界に入る方が、長く続けられる職場に出会えるよう応援しています。

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