接着剤メーカーの技術サービスを13年やっていた西尾と申します。
硬化しない、きれいに塗れないという相談で客先の工場へ出向く仕事でした。
現場でミキシングノズルを見せてもらうと、私はいつも同じ質問をします。
この段数は、どなたが決めたものですか。
返ってくる答えは、だいたい2つです。
装置屋さんが最初に付けてきたもの。
あるいは、前の機種と同じ品番。
混ざっているかどうかは、見ても分からない
兵神装備の技術コラム2液混合装置には、2液性接着剤のデメリットとして、本当に混合できているかがわかりにくい、とあります。
色調で判断できる場合もあるものの、色が似ていれば分からない。
流量で確かめようにも、粘度が高くて計測が難しいとも書かれています。
証拠を現場で見る手段がないので、段数は「不安だから多めに」で決まり、決まったあとは誰も触りません。
「ゆっくり出せば混ざる」は成り立たない
スタティックミキサーは、エレメントを1つ通過するごとに液を2分割します。
タクミナが公開しているスタティックミキサーの解説によれば、分割数はエレメント数nに対して2のn乗です。
12段なら4,096層になります。
2液の材料は粘度が高く、流れはたいてい層流です。
乱流でかき混ぜられるのではなく、分割と剪断と再合流の繰り返しでしか混ざりません。
専業メーカーのmedmixは、混合品質をCoV(変動係数)で表し、混合効率の指標の解説にこう書いています。
層流において、あるミキサーで達成できるCoVは、材料のレオロジーとミキサーの形式とエレメント数だけで決まり、運転条件には依存しない。
吐出の速さや圧力を変えても、混合度は動かないということです。
混合不良のときにまず吐出を遅くしてみる対処をよく見かけますが、層流である限りそれで混ざる理屈はありません。
増やした分は、そのまま捨てている
では多めに付けておけばいいのか。
今度はコストの問題です。
medmixのStatomixシリーズのカタログには、型番ごとの廃棄体積が載っています。
ミキサー内に残って捨てることになる量です。
内径10mmのMSシリーズを抜き出します。
| エレメント数 | 全長 | 廃棄体積 |
|---|---|---|
| 18段 | 149mm | 3.8mL |
| 24段 | 185mm | 4.2mL |
| 32段 | 234mm | 6.6mL |
| 48段 | 334mm | 10.0mL |
18段と48段では、1本あたり2.6倍の差です。
1本ならわずかですが、段取り替えのたびに交換する現場では月単位で効いてきます。
段数を増やしても届かないところ
medmixは別の技術記事で、混合比が1対1から離れた材料ほど、十分な混合品質に必要なエレメント数が大幅に増える、と説明しています。
もうひとつ厄介なのが、比重差と粘度差の組み合わせです。
先ほどの兵神装備の比較表では、比重差が大きくかつ粘度差がある液は分離するため使用が難しい、とされています。
段数を足す話ではなく、ダイナミックミキサーに替えるかどうかの判断です。
どちらのミキサーを使うかは、装置側でほぼ決まっています。
ナカリキッドコントロールの2液型ディスペンサーで塗布する機種の一覧では、機種ごとにスタティックかダイナミックか、選べるのかが仕様表に載っています。
まとめ
- 層流では、混合度は材料とミキサー形式とエレメント数で決まる。吐出速度では変わらない
- 段数を増やすほど、ミキサー内に残って捨てる量も増える
- 混合比が偏る材料や、比重差と粘度差が大きい材料は、段数では届かない
いま使っているノズルの品番を、一度カタログで引いてみてください。
何段で、内径がいくつで、廃棄体積がどれだけか。
それが分かるだけでも、次の判断は変わります。
